おばあちゃんの財布を騙し取れ

皆様、明けましておめでとうございます!

 

昨年は3月にブログを開始し、一年間ご愛読ありがとうございました!

 

また今年も増田ブログとリファインあきる野店共々よろしくお願い致します!

 

皆様にとって2019年が充実した一年でありますように!

 

では今年最初のブログ、始めます!

 

今回はお正月らしく落語ネタですが、興味無い方も最後まで読んで頂けたらと思います(笑)

 

僕は落語をよく聞くんですが、その中でも「猫の皿」というのが、とても好きなんです。

 

内容はこのあと詳しくお話しますが、ちょっとだけ前置きを…

 

 

江戸時代に「道具屋」と呼ばれる、現代で言うところの問屋さんとかディーラーさんのような職業の人が掘り出し物を探し歩いていました。

 

江戸幕府が終わり、時は明治維新

江戸から地方に逃げて行った人達が逸品を一緒に持ち去った為、地方に行けば兜や刀、骨董品などの掘り出し物が置いてあるだろうと考え家々を訪ねては

 

「おまえさん所の兜や刀を倉の中に寝かせといては可哀想だ。俺に売ってはくれないか?」

と安い値で買い、それを骨董品屋に高い値で売り付ける。

 

そんな掘り出し物を探している旅の途中で寄ったお茶屋の店主との掛け合いを描いた話なんです。

 

これが人間模様を描いていて本当に面白いんですが、もちろんこれは作り話!

 

と思っていたら

 

先日、僕の担当している90歳のお婆ちゃんのカットをしている時に、そのお婆ちゃんが最近体験した話を聞いて「まさに猫の皿!」と思ったのです。

 

それは、おばあちゃんとオレオレ詐欺師の掛け合いなんですが、

 

今日は

 

僕がその詐欺師目線になりまして、

 

「猫の皿」と共にお送りしたいと思います。

 

 

それではスタート!

 

「猫の皿」

「おばあちゃんの財布」

 

道具屋「あ〜、もう何日も旅を続けているが、なかなか掘り出し物ってのは見つからないもんだ。

江戸に妻を置いてきたけど、このまま手ぶらで帰るってんじゃ妻に合わす顔が無えや。」

 

 

詐欺師「あ〜、もう何日も電話をかけているが、なかなかオレオレ詐欺に引っかかる老人は少ないもんだな。

事務所にいるボスはマジで怖い。このまま結果を出せなかったら、俺ボコボコにされるんじゃねえか…」

 

 

道具屋「まあ、そうは言っても見つからねえんじゃしょうがねえ。

一度、江戸に帰って改めてまた旅に出るとするか。

しかし、江戸まではまだ長い。

さすがに歩き疲れたな。

おっ!そんな事を思ってたら、あの先に見えるのは茶屋じゃねえか。

どれ、一休みしてまた歩き出すとするか。」

 

 

詐欺師「まあ、そうは言っても引っ掛からないんだから、しょうがないよな。

最近は世間も、母さん助けて詐欺に気を付けるように呼び掛けてるもんな。

ボスには適当に言い訳するか。

どうせ駄目だろうけど最後に一件だけ電話してみて、それでボスに報告しに行くか。

え〜と、これでリストの最後か。西多摩の方の番号かな?

042ー559ー・・・」

 

 

道具屋「ごめんよ!爺さん、席は空いてるか?」

 

茶屋「どうぞどうぞ!空いておりますよ。

ささ、こちらへどうぞ。外は寒いでしょ。」

 

道具屋「寒いのは外だけじゃねえや。ふところが寒くてしょうがねえ。

爺さん、熱いお茶をくれねえか?」

 

茶屋「承知しました。ちょっとお待ちくださいよ。」

 

道具屋「はあ〜、しかしツイて無え時ってのはあるもんだな。これだけ何日も歩いて一つも見つからねえとはな…」

 

 

詐欺師「もしもし?お婆ちゃん?俺だけど!」

 

お婆ちゃん「太郎かい?

最近遊びに来ないからつまらなかったよ。

元気にしてたかい?」

 

詐欺師「元気だったよ!お婆ちゃんは元気だった?忙しくて会いに行けなくてごめんね!」

 

 

茶屋「お待ちどうさまでした。」

 

道具屋「おう!ありがとうよ!」

 

(ゴクゴク)

 

道具屋「あ〜上手い!疲れが無くなっていくみてえだ。

 

ん?

爺さんの足の周りで何か動いたと思ったら…猫かよ。

しかもよく見りゃ店の隅っこに5〜6匹固まっておまんま食ってるじゃねえか。

この爺さん、よく店ん中で猫なんて飼えるな。

これじゃあ、お茶の中に毛が入るじゃねえか。

俺は猫が大嫌いなんだ。

毛は抜けるし、そっけないし、メシは食うし、寝るし…

メシも汚ねえ食いかたしてんな〜

人間様の残飯に寄ってたかって…

 

ん?

 

あの皿…

あまりにも汚ねえから気付かなかったけど…

 

間違いねえ!

 

ありゃ、絵高麗の梅鉢の茶碗じゃねえか!

 

下値に見積っても三百両は下らない代物。

 

それにしても、なんだってこんな汚ねえ猫にこんな高い皿でメシ食わせてんだ?

 

ははーん。

さてはこの爺さん、皿の価値を知らねえな?


こりゃ何とか安い値で皿をだまし取っちまおう!

 

ククク(笑)

 

いよいよ俺にもツキが回ってきたってもんだ!」

 

 

お婆ちゃん「太郎はいつもお婆ちゃんの家に遊びに来るとお婆ちゃんの膝に座ってきてね〜。そりゃあ可愛かったんだよ。」

 

詐欺師(この婆さん、本気で俺を孫だと思い込んでるな。

でも、油断は出来ねえ。

いつ、バレるかわからねえからな。

太郎ってのはどんなヤツなんだろう。

少しずつ話を合わせながら太郎になりきってやろうじゃねえか。)

 

お婆ちゃん「最近遊びに来ないからつまらなかったよ。元気にしてたかい?」

 

詐欺師「う、うん…

元気だったよ。

お婆ちゃんも元気そうだね。」

(ばばあ、何度も同じ事聞くなよ!)

 

お婆ちゃん「太郎はいつもお婆ちゃんの家に遊びに来るとお婆ちゃんの膝に座ってきてね〜。そりゃあ可愛かったんだよ。」

 

詐欺師「そっかあ」

(それもさっき聞いたつーの)

 

お婆ちゃん「最近遊びに来ないからつまらなかったよ。元気にしてたかい?」

 

詐欺師「待てよ…

この婆さん、もしやボケてんじゃねえのか?

 

だとしたら太郎の顔なんて覚えてねえだろ。

 

だったら振り込ませるより、直接会って金を渡してもらった方が足跡も残らねえし確実だな。

 

ククク(笑)

 

いよいよ俺にもツキが回ってきたってもんだ!」

 

 

道具屋「時に爺さん、可愛い猫だねえ。
こっちへおいで。ははは、膝の上に乗って居眠りをしだしたよ。俺は猫が大好きだあ。
爺さんのところの猫かい?」

 


茶屋「へえ。猫好きですから、5〜6匹おります。」

 

道具屋「いや、俺も猫好きでずいぶん飼ったんだが、どういうものか家に居つかないんだ。

ただ、江戸で俺を待つ、かかあを一人にさせとくのはあまりに可哀想でな。

俺は家を空けとく事が多いからよ。

そんな時に猫がいたら、かかあの気持ちも少しはまぎれるんじゃねえかってな。

だからよ、ぜひこの猫を1匹譲ってくれねえか?」

 

茶屋「そうですか…

ただ、この猫は死んだ婆さんが大変可愛がっていたものでして。

譲ってしまうのは婆さんに申し訳なくて。」

 

道具屋「なるほどな!

さぞ、優しい婆さんだったんだろうな!

でも、俺はこの猫がたいそう気に入っちまってな!

婆さんが可愛がってたように俺も可愛いがるよ!

 

あ!

 

もちろんタダってわけじゃねえんだ!

 

え〜と(ゴソゴソ)

 

ほら、3両やるからよ!

 

な!譲ってくれねえか?」

 

茶屋「そうですか…

そこまでおっしゃるなら、どうぞ持ち帰って可愛がってやって下さい。

猫、良かったの〜。良い旦那様に拾われて。」

 

道具屋「おう!俺は可愛いがるぜ!」

 

 

詐欺師「あのさ、お婆ちゃん。

実は俺、さっき車を運転してて歩いてる人にぶつかっちゃってさ。」

 

お婆ちゃん「ええ?

相手の人は大丈夫なのかい?」

 

 

詐欺師「うん。

ちょっとぶつかっただけだから怪我もしてなさそうなんだけど。

でも、すごい怖い人でさ、警察にはいわないでやるから300万持ってこい、って言ってきたんだよ。

さもないと俺の家まで嫌がらせに来るって言うんだ。

俺、お父さんとお母さんに心配かけたくないからさ。

お婆ちゃん、300万を俺に貸してくれないかな…」

 

お婆ちゃん「そうだったんだ。

それはツラかったね。

わかったよ、お婆ちゃんが払ってあげるからね。」

 

詐欺師「本当?

助かるよ!

お婆ちゃんありがとう!

それで、さっそくなんだけど明日受け取りに行きたいんだけどいいかな?」

 

お婆ちゃん「じゃあ、お婆ちゃんは今からお金をおろしてくればいいんだね。大丈夫だよ。明日おいで。太郎はいつもお婆ちゃんの家に遊びに来るとお婆ちゃんの膝に座ってきてね〜。そりゃあ可愛かったんだよ。」

 

詐欺師「そっか。お婆ちゃん、その話はまた今度聞くね!じゃあ、明日行くね!」

 

 

道具屋「ところで、爺さん、この猫はその皿でメシを食ってたのか?

 

茶屋「そうでございます。」

 

道具屋「いや、猫つーのは皿が変わるとメシを食わねえっていうからよ。

汚ねえけどその皿も俺がもらっていくよ。」

 

茶屋「いや、皿でしたらこっちにもっと軽くて持ち運びのしやすいのがありますから、こちらをどうぞ。」

 

道具屋「いや、その皿じゃねえんだ。

俺はこの皿で良いっつてんだよ。」

 

茶屋「いえ、申し訳ないんですが、この皿は差し上げられないんです。」

 

 

(翌日)ピンポーン♪

 

詐欺師「お婆ちゃん!俺だよ!太郎だよ!」

 

お婆ちゃん「太郎かい?

今、玄関を開けるからね。」

 

ガチャ

 

詐欺師「お婆ちゃんこんにちは。

ちょっと風邪引いててマスクしてるんだ。

お金なんだけど用意してくれた?」

 

お婆ちゃん「もちろん用意したよ。

ほら!これがそうだよ。

ちゃんと300万あるよ。」

 

詐欺師「ありがとう!

助かるよ!

今度必ず返すからね!」

 

 

警察「動くな!

詐欺容疑でおまえを現行犯逮捕する。」

 

詐欺師「え?どういう事?

俺、このお婆ちゃんの孫なんだけど。

お金を借りに来ただけなんだけど。」

 

警察「お婆ちゃん、この男性と知り合いですか?」

 

お婆ちゃん「いいえ。私はこんな人知りません。」

 

警察「昨日こちらの家から詐欺被害に合っている、と通報があったんだ。

言い逃れは出来ないぞ!」

 

 

道具屋「いいじゃねえか!

そんな汚ねえ皿!

こっちは3両払ってんだ!」

 

茶屋「旦那様は汚いとおっしゃいますが、ご存知ないでしょうが、この皿は絵高麗の梅鉢と言いまして、世に出れば三百両は下らない高価な品でございます。」

 


道具屋「え?

そりゃ知らなかった!

俺はそんな事全然知らなかった!

 

おい、猫!

いつまで俺の膝に乗っかってんだ!

毛が抜けるじゃねえか!

さっさとどけ!

 

じゃあ聞くけどよ爺さん!

何だってそんな高価な皿で、猫にメシを食わせてんだ?」

 

茶屋「それが面白いんですよ、旦那様。

 

この皿で猫にメシを食わせておりますとね、

 

時々猫が3両で売れるんでございます。」

 

 

詐欺師「ちょっと待ってくれよ!

未遂に終わったんだから許してくれてもいいだろ!」

 

警察「ダメだ!

おまえには余罪がありそうだからな!」

 

詐欺師「おい!婆さん!

あんたボケてたんじゃねえのか?

 

こっちは年寄りの暇つぶしに付き合ってる時間は無えんだよ!」

 

お婆ちゃん「フフフ

 

それが面白いんですよ、お若い人。

 

私がボケたフリをしておりますとね、

 

時々詐欺師が勝手に捕まってくれるんでございます。」