第1回! かずき増田のすべらない話

               『シャンプーテストにて』

今年も全国の新入社員の方が社会人としての一歩を歩き始めましたが、我がリファインを支店とするトップアート(全12店舗)にも今年もフレッシュな新人さんが入ってきてくれました。

実は僕は、毎年4月に1ヶ月間行われる新人研修の技術講師をさせて頂いているんですが、内容はパーマを巻く「ワインディング」という技術と「シャンプー」の2つで、5月からお客様に入れるように1ヶ月間練習し4月末にテストがあるんです。

このテストは美容師になって初めてのテストなので当然ながら皆さんとても緊張しています。

テストは実際に講師の髪を洗います。

決められたタイム内に決められた手順で洗い、気持ち良さはもちろんですが、顔に泡やお湯はかかっていないか、すみずみまで洗われているか、頭皮に指が当たっているか、などなど沢山の採点基準をクリアすれば合格です。

シャンプー台が2台で講師は3人いて受講生は10数人いる為、一度に全員は出来ず順番にやっていきます。

シャンプーテストの順番を待っている時間はシャンプーのイメージトレーニングをしたりワインディングの練習をしたりして、講師も休む時間が必要なので一度洗われたら次に洗われるまでに、採点を終えその後は練習している新人さんを教えたりします。

どの講師に当たるかはくじ引きで決められるんです。

 

さて、昨年のシャンプーテストの日の事。

くじ引きで僕に当たった「ナナちゃん」という女の子と「室田くん」という男の子、この二人の話を今日はしたいと思います。 

 

 僕が一人目の方に洗われた後、次の順番を待ちながら練習している子達の所に行くと二番目に僕を洗う予定のナナちゃんが、か・な・り緊張して待っていました。

僕は「自信を持ってやっていこう」「100点じゃなくても合格出来るから多少のミスは気にするなよ」なんて話かけたりしていましたが、いよいよナナちゃんの番に!

 

そして、なんとかタイム内に洗う事が出来たナナちゃん、解放感なのか達成感なのか一気にテンションが上がり次に順番待ちをしている室田くんの所に行き、機関銃のように話しかけ始めました。

僕もナナちゃんの採点を終え一度休みながら近くで二人のやり取りをそっと見ていました。

室田くんはもともとお世話にも器用とは言えず、覚えも他の子より良いとは言えなかった為、とても自信が無さそうでナナちゃん以上に緊張していました。

やはり器用さや要領は個人差があるので、正直このテストで合格は難しいかもしれないな…でも、追試でなんとか受からせたいな、なんて僕は考えていました。

すると勢いに乗っているナナちゃん、室田くんに「あきらめないで!今からでもイメトレしよう!私が教えてあげる!室田くんは手の動きが小さいんだよ!大きく動かそう!はい、大きく大きく!」と、指導をし始めました。

ナナちゃん面倒見が良くてエラいぞ!と僕は思っていました。

すると更に、どこで教わったのか、応用技術の為まだ教えていなかった「指ぬき」という髪が指に絡まった時に外すテクニックまで教え始めました。「指ぬきは豚の手の形をしてやるんだよ!はい、豚さんの手をして!はい、豚さん豚さん」と言いながら一緒にやらせようと頑張っています。

気弱な室田くんは何も反抗できず、ただただナナちゃんに言われるがままになっていました。

 

 

テストの結果ですが、ナナちゃん不合格。